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平成12年度高校選手権奈良県予選戦評

--- 第9回奈良県高等学校小倉百人一首選手権大会 ---

 去る5月7日(日)、奈良市青年の家で高校選手権奈良県予選が行なわれた。奈良高校、東大寺学園高校、大淀高校で代表枠一つが争われたが、実質的には奈高対東大寺の決戦となったので、その試合についての戦評を書くことを予め断っておく。

奈高辛勝 東大寺健闘

奈良高校 VS 東大寺学園高校
○上出 絵美(B級) -- 村井 一裕(C級)×
×吉田 千尋(C級) 4 江口  潤 (C級)○
○稲葉  徹 (A級) -- 西尾 祐一(B級)×
○三木 まおり(A級) 4 邨田 大輔(B級)×
×森本 麻希(B級) 3 武部 軌良(C級)○

 さて両校の組み合わせであるが、蓋を開けてみれば、上出 - 村井、吉田 - 江口、稲葉 - 西尾、三木 - 邨田、森本 - 武部、となった(左が奈高、右が東大寺)。組み合わせをみた限りでは三木、森本がやや有利と見られるが、東大寺側も江口や村井などは試合展開によっては勝てる可能性は残されており、主将、副将対決のどちらかでもとれば勝てる可能性は大きくなる。実力的には奈高有利だが、当たりで判断するならば、やや東大寺が有利な当たりだといえるだろう。会場を団体戦特有の緊張感が支配するなか、午前10時12分試合が始まった。
 試合は難波津が詠まれた直後から動き出す。1枚目「むらさめ」で 東大寺江口がいきなりダブル。続く2枚目「きみは」で吉田が江口陣で華麗に渡り手を決めリズムをつくる。さらに5枚目「よのなかよ」で西尾もお手つき。これで稲葉は調子に乗り始め「あわじ」、「かく」などを自陣右で早い守りを決める。つづく「はるの」、「たか」で奈高の三木、上出がそれぞれお手を犯すが、15枚目「こい」で西尾が今度はダブル。稲葉はここで「わすれ」などをキープし差を一気に突き放しにかかる。この時点で稲葉、吉田がリードしているが他の3戦はいずれも均衡しておりまだまだ試合はわからないといったところ。そして稲葉、吉田のリードで試合が進む中、接戦の中から武部が「いまは」、「つく」など確実にキープし抜け出てくる。56枚目「わたや」が詠まれた時点で稲葉 - 西尾が5-14、吉田、武部が有利に試合を進め、上出、邨田が若干リード。邨田はA級相手によく頑張っているといえるだろう。そして61枚目「うら」で稲葉がリーチを掛けたあたりから奈高有利の雰囲気が漂い始める。稲葉リーチ、吉田も大差でリード、上出も 5 - 10 程度でリード、そして三木も盛り返し互角に追いつき、森本も試合を壊さずに付いていっている。71枚目「あさぼらけあ」で稲葉が勝ち奈高1勝。そして続く「かぜを」、「もろ」を上出が取りリーチを掛ける。そして続く74枚目「ふ」を上出が自陣で押さえ奈高2勝目、全国大会まであと1勝に迫る。ここで三木は完全に逆転し2-8とするが、吉田の調子がプレッシャーからかおかしくなり始める。江口に札をゆっくりとキープされ、78枚目「ありあ」でなんとダブルを犯し、とうとう4-5と1枚差になってしまう。ここまでで森本、邨田もそれぞれ挽回しており、80枚目「ほ」が詠まれた時点で残る3組の枚数差は、三木-邨田(2-5)、森本-武部(4-3)、吉田-江口(4-4)となり東大寺に大逆転の可能性がでてくる。空札が2枚続いた後の「なつ」は東大寺の3人が取り、勝敗は全くわからなくなる。吉田がさらにお手を犯したあとの87枚目「あらし」、武部、江口は取るが邨田は三木に鋭く攻められる(三木-邨田(1-4)、森本-武部(4-1)、吉田-江口(4-1))。勝敗はもはや三木-邨田戦にかかっているといっても過言ではない。ここで邨田は自陣の4枚を全て右側に置き、守りきる作戦に出る。しかし次に詠まれた札は三木陣に1枚残った「ひさかた」。三木がこれを確実に押さえ奈高の勝利を決めた。残る2組は江口、武部がそれぞれ勝利し、奈高に最後に一矢報いた。

ここから一戦一戦についての感想を述べていく。

 まず、稲葉 - 西尾戦。東大寺としてはこのエース対決でせめて接戦にもっていきたかったところだが、結果的には大差になってしまった。西尾にとっては、この対決を制することができれば一気に東大寺有利となる、ということが返ってプレッシャーとなってしまったのではないだろうか。プレッシャーによるものと見られるお手が随所に見られた。おそらくはそのプレッシャーと稲葉のポテンシャルの高さとが相まって大差になってしまったのだろう。稲葉に関してはほぼいつも通りのかるたが取れていたように思う。おそらく、この予選に出場した選手の中で最も練習をこなしているのは稲葉であろう。練習でもA級優勝者に3連勝するなどしており、そういった事柄が自信の裏打ちとなっていつも通りのかるたが取れたのかもしれない。

 三木 - 邨田戦。邨田は足を骨折していたがすばらしいかるたを見せた。むしろ骨折のハンデがよりいっそう邨田を奮い立たせているようにも見えた。前半、邨田が気迫で三木を圧し、試合を有利に進めていたが、三木は気迫に圧されながらも自分のかるたをひたすら取りきろうとしており、その姿勢が中盤以降の取りに表れたのではないかと思う。邨田の気迫に三木はひたむきさで立ち向かい、その結果として4枚差の勝利を得たように感じる。邨田はよく頑張ったが三木を崩すまでには至らなかった。三木も稲葉と同じく人一倍練習する。この一年でA級と何回も練習し、リードされながら試合が進むということも数えきれないほどあっただろう。また、試合の後半で最も厳しくかるたを取らなければならないことも練習で学んだ。今回のような試合展開にも対応できる強さは、自分より強い相手と何度も練習を重ねたことにより自然に身に染み付いた力ではないか、と感じた。気迫の篭もった名勝負であった。

 上出 - 村井戦。この試合は段位では上出が優っているが、村井も東大寺勢の中では最近一番の成長株で、団体戦であることもあり試合自体は予想しにくく、チームの勝敗の肝の一つであったと思う。試合は序盤は接戦であったが、中盤上出が抜け出し、その勢いを止めることなくそのまま勝利した。勝ちかけたところで勝ちきれた上出の取りは今後の好材料であるといえる。村井はまだ1年生なので、この経験、この緊張感を来年以降、より高いかるたのレベルで活かしていって欲しいと思う。これは2年生である上出にもいえることである。両者が今後どう成長していくか見ていきたいと思う。

 森本 - 武部戦。最初は森本有利と見ていたのだが、私の予想を超え武部が頑張りを見せた。森本も決して悪くなかったところからも武部の頑張りがわかる。序盤の一進一退の攻防から中盤抜け出し、東大寺に「勝てるかも」という雰囲気を作り出したのは武部の頑張りだったのかもしれない。団体戦として見ると、武部がもう少し早く決めていればさらに東大寺有利に傾いたかもしれない。が、やはり森本もB級、試合を壊さずしっかりと付いていき、終盤追いついた。森本は全国大会でもこのような堅実なかるたを見せて欲しい。三木 - 邨田戦と森本 - 武部戦は接戦で非常に見ごたえがあった。

 吉田 - 江口戦。この試合は、両者が同じ段(C級)で実力が拮抗している団体戦ならではの組み合わせであり、試合がどう展開するか非常に興味深い対戦であった。試合は序盤から吉田が飛ばし大差がつく。このまま終わるかと思われたが、横で取っていた東大寺西尾が「江口諦めんなよ」と非常に強い口調で励ましをかけたあたりから江口が踏ん張りだす。対する吉田は勝利へのプレッシャーからか手が止まり始め江口が連取する。さらに吉田はこれもプレッシャーからだと思うがお手つきを連発し、最後には追いつかれ逆転負けを喫してしまった。吉田の逆転負けは完全にプレッシャーによるもので、今後の練習では精神面を鍛えることを意識していって欲しい。また、逆転した江口も最後まで諦めずよくやったのだが、半分は吉田のミスに助けられたものであり、序盤大量リードされないよう集中力を鍛えなければならない。味方に声をかけられるだけではなく、自分が周りをフォローできる強さを身に付けていってもらいたいと思う。吉田はメンタルの強さを、江口は集中力を、それぞれ鍛えていって欲しい。

最後に

 今回、結果的には前評判通り奈高が勝利したわけだが、団体戦の試合という意味では東大寺のほうが団体戦らしい戦い方が出来ていたように感じる。西尾しかり、邨田しかりである。そして最後の3組の試合は見ている側にも「もしや」の期待を抱かせ、非常に見ごたえがあった。奈高も決して悪くはなかったのだが、今回に関しては特に東大寺にそれを感じた。これはもしかしたら東大寺に長い伝統があるからかもしれない。奈高に関してはやはりA級が2本取り、残りの一本を3人で一致団結して取りにいくというのが基本の形になっていくと思う。今回、稲葉と上出で2勝したわけだが、最後の一本へ向けての一致団結が東大寺に比べていまいち弱いという印象を受けた。最後も三木個人の勝利が結果的に3勝目になったような気がする。団体戦では勝利を決定する最後の一本を取るのに強烈なプレッシャーがかかる。だが、だからこそ残った3人で一致団結し勝利をもぎ取りにいかなければならないと思うのだ。そういった感覚を身に付けることが今後の奈高にとっての課題といえるだろう。
 この2校がお互いにとって良いライバルであり続け、より高いレベルに到達するためにお互いに切磋琢磨し合っていくことを今後とも期待したい。

文責   村上 元史

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