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平成15年度高校選手権奈良県予選戦評

--- 第12回奈良県高等学校小倉百人一首選手権大会 ---

 今年度の予選は、例年通りの組み合わせとなるが東大寺学園高校と奈良高校の2校で代表枠が争われた。今回の東大寺学園のメンバーは、東大寺の歴代でベスト3に入る程の個人レベルを揃える一方、奈良高校は3人で戦わなければならないという非常に対象的な両校の状態である。試合前においては、東大寺の一方的な試合になるのではないかとも思われたが、いざ試合が始まってみると、「一方的」という印象は受けない試合展開となった。以下その試合の詳細を述べていく。

東大寺三連覇

東大寺学園高校 VS 奈良高校
○小林 篤典(A級) 3 持田 貴子(C級)×
○岡本 哲弥(C級) -- 中逵 沙耶(D級)×
○松田 大志(B級) 不戦勝 ×
○瀬尾 瑞人(A級) -- 仲井 友子(C級)×
○濱田 新平(B級) 不戦勝 ×

 今回の出場選手であるが、東大寺側は瀬尾以外は全て新しい出場選手であるにも関わらず、個人的には非常にハイレベルであることから、この1年の東大寺の努力が窺える。一方の奈高側であるが、勧誘がうまくいかず出場選手が3人という結果になってしまった。確かに東大寺は、高校からかるたを始める選手もいれば、同中学で既にかるたを始めている選手を即戦力補強も出来て有利とも言えるのだが、過去に2度奈良高校が勝利したときには、奈高はほぼ全員が高校からかるたを始めたメンバーであったし、高校当時奈高のA級選手であった有村、村吉、三木、稲葉、上出はいずれも高校からかるたを始めた選手であった。そのことからもわかるように、東大寺側が即戦力を補強できるという意味での有利さと常に向き合わなければならないことが奈高競技かるた部には求められるため、厳しい意見かもしれないがそれを奈高側の主たる不利な要因として用いるのはあまり適切ではないように思うし、個人の実力までその要因は影響を及ぼさない。奈高は3人での戦いという厳しい条件であるが、どこまで東大寺に喰らいつくことができるか、それがこの試合の最も注目すべき点であろう。
 さて組み合わせであるが、小林-持田、岡本-中逵、瀬尾-仲井、となった。岡本-中逵は級が近い対戦、他の2組は[A級 VS C級」の対戦である。東大寺側は1勝するだけでチームの勝利が決定する。一方奈高側は勝つためには全勝しなければならない。正直に言ってこの当たりは厳しい当たりなのだが、有意義な戦いにするという意味で、むしろA級と当たってよかったのではないだろうか。東大寺側は1勝すれば勝ちなのだが、それだけではもの足りず、やはり全国大会も見据えた上で全勝することが要求される。そして奈高側はそれに対してどこまで健闘出来るのか、という思いが巡るなか試合が始まった。

 試合開始直後、1枚目「あさぢ」、3枚目「あさぼらけう」で小林が連続お手つき。続く4枚目「あけ」を持田が取り、5枚目「なにし」は相手右下段に札を残してしまうが、持田がいきなり4枚のマージンを得る。6枚目「しの」で瀬尾がお手つき。しかし小林が落ち着いた声掛けをするなど、東大寺側に焦りの様子はない。序盤は空札が続き、11枚目「おぐ」までで出札は2枚というスローペース。12枚目「あらざ」で持田が渡り手を決め、持田の気迫は申し分なく伝わってくる。岡本-中逵は14枚目「ちぎりき」を岡本が取ったのを皮切りに「15:たち」「16:やまざ」「19:おおえ」「20:ありあ」と5連取し、岡本がリードし始める。ここまでで、仲井の落ち着いたかるたにうまく凌がれていた瀬尾だが、23枚目「いに」をキープした後、「25:ひさ」「28:わがそ」「30:たか」「31:なげき」を怒涛の攻めで連取し、差を広げ始める。33枚目「たき」の時点で、岡本-中逵、瀬尾-仲井がそれぞれ14-21、小林-持田が20-15。ここまでで持田は5枚リードしよくやっているのだが、小林に焦る気配は見られず、40枚目「おおこ」から「42:あさぼらけあ」「45:なげけ」「48:もろ」「49:よのなかよ」までの出札を5連取して一気に追いつく。岡本にリードされながらも追いつこうとする中逵は、50枚目「わたのはらや」を守り、続く「51:しら」も攻めるなど挽回をはかるが、54枚目「ちは」でお手つきをし、差は7-19と12枚差まで広がる。ここでA級瀬尾のリードも大きくなり、東大寺側は1勝すればチームの勝利が決まるため、かなり東大寺有利の気配が漂ってくる。中逵はここが踏ん張りどころで「56:ゆう」「59:みかき」「61:ちぎりを」などを懸命に守るのだが、岡本も着実な攻めをみせ、差は縮まらない。「68:もも」で中逵がお手つき、「69:いまこ」で小林がセミダブルをし、この時点で小林-持田が8-8、岡本-中逵が2-14、瀬尾-仲井が3-13となる。そして75枚目「みよ」で岡本が勝利し、ここで東大寺のチームとしての勝利は決まった。続いて瀬尾が「77:いまは」を取りリーチ。次の出札、1字の「す」を抜いて瀬尾が4勝目を挙げる。チームとしての勝敗は決まってしまったが、前半から持田が押し気味に進めていた残りの1組に、場の注目は集まる。この戦いの意義はむしろここからだといっても良いだろう。この78枚目「す」の時点で小林-持田のスコアは5-7。続く「79:わすれ」を小林は守るが(4-7)、次の「82:かぜを」は持田が敵陣の共札から切れのある戻りを決める(4-6)。持田の動きは前半から衰えていない。次の「81:あまつ」では小林がお手を犯し、5-5からの終盤勝負となる。次の出札は持田が先程戻って取った「かぜを」の共札「かぜそ(2字)」。これを持田はきっちり攻めるが、小林は相手陣を触ってしまいダブルになる。小林の2度の連続お手つきによって6-3となり、持田が逆転する。83枚目「つく」は小林が守る(5-3)。84枚目「あい」持田は鋭く自陣右に反応するが空振りしてしまい、小林が拾う(4-3)。個人戦として見た場合、この「あい」の空振りが持田にとってはかなり痛く、ここから小林が「89:やえ」「92:きり」「93:あきの」「94:わび」を4連取して東大寺の目標を達成する5勝目を決め、今年度の予選は5勝0敗で東大寺学園の勝利となった。

東大寺について

 今回、1勝すればチームの勝利ということで、この予選の内容や結果からの判断で今年の東大寺のチームとしての真の実力を計ることはできず、ベールに包まれたままである。今回の3組の対戦について言わせてもらえば、瀬尾についてはこの試合の少し前あたりから、一時期のスランプを脱し、A級としてのかるたになってきた気もする。無意味なお手つきなどもほとんどなく、C級相手に12枚勝利というのは順当な勝利である。瀬尾の真価が問われるのは対戦相手が強敵の場合であろう。全国大会では、組み合わせにおいて強い選手に「当たりにいく戦術」と「外す戦術」の両方が場合に応じて必要であるが、どちらの戦術においても瀬尾には勝利が要求される。来年各個人の実力がどうなるかというのはわからないが、どの場合にせよ瀬尾は中核の一員であることはほぼ間違いなく、試合では自分の役目は勝利を得ることだ、ということを踏まえてこれからの練習にも励んでいって欲しい。県協の他のA級選手と練習を重ねていくのが最も効果的であろう。小林については、まだ未知数な部分がある。ただ、この1年で急成長しA級に上り詰めたのは高く評価できる。またこの試合に関しても焦りが悪い方向に出るというものはなく、むしろ焦りはないように見えた。自分に負けるというような要素が見られず、そこが長所でそれゆえ急成長できたのかもしれない。取りが自陣中心なのがやや気にはなるが、東大寺の中心選手の1人として小林も勝利が要求される選手である。岡本については、この試合、岡本-中逵の結果がどうなるかというのにも注目していたのだが、岡本の勢いが中逵を上回った。岡本は今回の東大寺では実質的には「5将」の役割に当たる。5人の団体戦では個人としての実力が強いというだけでなく、主将から5将までのそれぞれが役割を果たすことが重要である。主将や副将が強い選手と当たって競った展開になったときなど、4将や5将が勢いのあるかるたを展開していれば、主将や副将もそれを心強く思うことができ、チームの士気に、そして結果にまで影響を及ぼす。今回の岡本の試合からはそれを感じることができ、今回のようなかるたが全国大会でも求められる。また全国大会を経て、来年にはA級も視野に入れて実力を伸ばすことが期待されている。
 今回の東大寺は、A級の瀬尾・小林、バランスのとれたかるたを展開する濱田、かるたから強気が垣間見える松田、勢いのある発展途上の岡本と、選手それぞれの個性が強く、実力的に見ても全国で上から数えたほうが早い位置にある。この5人の個性が最大限に発揮されたときの実力というのは、まだ我々にとっては未知であるが、その実力が全国を制覇するというのは不可能ではないだろう。自分たちの潜在能力を存分に発揮し、入賞と言わず是非「優勝・全国制覇」を狙って欲しい。A級選手を5人揃えるチームにも、やりようによっては勝てるはずである。

奈高について

 奈高は今回3人での戦いとなった。個人の実力という考えを抜きにしても、5人戦において3人での勝利というのはかなり厳しく、ほぼ不可能といってもよい。A級選手3人でも勝つのはかなり厳しいだろう。それほどまでに人数が足りないというのは痛手であり、致命的と言ってしまってもよい。個々の試合内容に関して、まず持田に関して言えば、100点を付けることができる。A級相手に3枚差、チームの勝利の希望が少ない状況の中で、マイナス要因に逃げることをせず、自分の力を100%発揮することが出来た。試合中に成長しているのかと思わせるような内容で、今後実力を伸ばすことが十分に可能であることが垣間見れた。もしこちらの期待を述べるならば、来年の予選までにA級に上がることが期待されているので、そのつもりで今後の練習にも励んでいってもらいたいところである。仲井は今回の組み合わせでは負けてしまったのは仕方のないところである。序盤の展開はよかったが後半はやはり相手のほうが上手であったのは、経験の差によるところが大きい。全体的に落ち着いた印象で、かるたにムラがないところは長所である。持田もそうであるが、かるたを始めて1年でC級というのは十分に及第点をつけることができる。仲井も今後実力をつけていくことが期待されている。練習を重ねれば、A級まで登りつめるのも可能な素養は十分にある。最後に中逵に関してだが、この2年強の間、よく頑張ったと思う。他の活動との兼ね合い、そしてかるた部での同学年の選手が少ない中、よく続けてくれたとむしろ礼を言いたいくらいである。もし今回、1人でも欠けていれば奈高は出場すら出来なかったであろう。中逵のように多様な活動をしているかるた経験者がいることは、大げさな表現かもしれないが私は競技かるた界にとってはプラスであると考えている。
 奈高の最大の課題は「部員の確保」に尽きる。まだ持田、仲井が2年生であるので4月はもう1度やってくるのだが、それまでになんらかの形で部員を補強したいところである。東大寺に勝つ、というのはもちろん大事な目標なのだが、それ以上に部を存続させることがまず第一であることは、ここで述べるまでもなく本人たちもそう思っていると思う。かつての稲葉のように途中で入部し、一気に実力をつける場合もある。東大寺に勝つという意味でも、部を存続させるという意味でも、部員確保が至上の命題であり、部員を増やすにはどうすればいいかということに知恵を絞って欲しい。また、二人の実力がそれぞれ磨かれることが期待されているのは、先程述べたとおりである。

('03/05/26)

文責   村上 元史

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