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平成22年度高校選手権奈良県予選戦評

--- 第19回奈良県高等学校小倉百人一首選手権大会 ---

 奈良県の高校生かるたの活動はここ数年低迷していたが、今年度は畝傍高校・東大寺学園・奈良高校の3校での代表枠の争いである。近年で最も盛況な予選であるが、これは各高校の顧問の先生方や奈良県かるた協会指導者の尽力の賜物であると思う。各選手の個々の力にはばらつきがあるが、まずかるたをやってくれている高校生がいるということが喜ばしいことであるし、熱心に練習すればかるたの実力は順当に上達する。出場した選手や顧問の先生方に競技かるたやその団体戦の面白さを理解してもらうという観点からも、今年度の予選は非常に意義のある大会になった。
 以下、団体戦の代表校決定までの3試合について、試合の展開を中心に戦評しながら、全体について論評していく。

 

  東大寺学園 畝傍高校 奈良高校 勝点 勝数 順位
東大寺学園 -- × 1-4 × 2-3
畝傍高校 ○ 4-1 -- ○ 3-2 1 (代表)
奈良高校 ○ 3-2 × 2-3 --

 

 

1回戦 東大寺学園 対 畝傍高校

東大寺学園 VS 畝傍高校
○宮川 泰典(D級) 15 西岡 和奈 (D級)×
×岸田 盛吾(D級) -- 窪田 里奈 (D級)○
×坂根 史弥(D級) -- 川内 皐子 (B級)○
×森本 隆太郎(D級) 10 植田 しおり (C級)○
×中野 雅文(D級) -- 奥田真由子(D級)○
読手  荻田有希子(A級公認読手)

 

 東大寺学園と畝傍高校の対戦。畝傍高校は今大会の代表本命であるが、全ての出場選手がD級である東大寺学園の選手がとこまでついていくことができるかが注目点である。
 1枚目「こころに」、畝傍の植田・窪田が攻め取り、奥田も守りを見せる。4枚空札が続いたあと6枚目「うか」で川内と奥田が敵陣左を攻め取り、続く「ひとは」で川内が自陣右で早い守りを決める。10枚目「す」で植田が敵陣右下段を鋭く攻め取る。11枚目「これ」で東大寺の森本が守りを見せるものの、ここまでの取り合いでほぼ畝傍の流れとなってしまう。13枚目「なにし」で宮川が敵陣左を抜き、続く「たれ」では敵陣右を抜くが、同じ札で奥田は早い右の守りを見せ、中野 - 奥田 は早くも奥田のペースとなる。また同時に窪田が17枚目「しら」、19枚目「たち」で敵陣左を立て続けに攻め取ると、20枚目「みかき」で岸田がお手つきを犯し、21枚目「ここ(ろあ)」でも窪田が左下段を攻め取り、岸田 - 窪田 も窪田が優勢を取る。一方の東大寺であるが、同じ「ここ(ろあ)」で宮川が早い右の守りをみせると、23枚目「ちぎりき」をキープ、さらに27枚目「む」も左下段で拾って、東大寺で唯一のリードを広げる。植田 - 森本 は植田の流れで試合が進んでいくが、森本が粘りのある取り口でついていく展開となり、32枚目「この」の時点で、植田17 - 20 森本 という枚差で中盤を迎える。
 東大寺勢では宮川が唯一の奮闘を見せるも、残り4組はいづれも畝傍がリードを広げていく。33枚目「ゆら」を宮川が微妙な差で攻め取り、36枚目「ちは」を植田が攻め取ったところで、坂根 - 川内 は 坂根24 - 11川内となり、畝傍はエースの川内が期待通りの力を発揮する。38枚目「よのなかよ」で西岡のお手つきを得た宮川は、40枚目「みか(の)」でも自陣右を早く守るが、川内 - 坂根と奥田 - 中野では枚数差が広がり、畝傍側への流れを止めることができない。一方、リードする植田についていく森本であるが、39枚目「かさ」42枚目「あきの」で植田がお手つきを犯し、出札は取られているもののついていく展開をキープする。植田はいつものような落ち着いた取りが見られず、本調子ではないように見える。森本は45枚目「し(の)」で右中段の激しい守りを見せ、植田への流れを少しずつ食い止めていく。 奥田がリードを広げていく中、東大寺・宮川は47枚目「たか」を攻め、52枚目「なにはえ」をキープし、53枚目「み(よ)」を攻め取り、畝傍の流れに抵抗する。一方で窪田が45枚目「し(の)」47枚目「たか」49枚目「か(く)」54枚目「み(よ)」を連続して攻め取り試合を決定付ける。いつもの取りを発揮できていない植田であるが、54枚目「よを」を敵陣左で攻め取って 森本13 - 10 植田 とすると、59枚目「なに(はが)」でも左攻めを見せる。この間、森本の手が止まったように見え、続く60枚目「いまこ」で森本はお手つきを犯し、植田は試合の流れをようやく自分のほうへと引き戻し始める。
 59枚目「なに(はが)」で奥田が勝利、61枚目「あけ」で窪田が勝利、64枚目「ふ」で川内が勝利を決め、団体戦としてはここで畝傍の勝利が決定した。だが団体戦である以上、勝数(得点)・将成績・ときには選手の全勝者数なども求められるため、残りの2試合も目を離すことができない。森本 - 植田 では、続く65枚目「おおえ」で森本が自陣左の「あふ(こ)」を触るお手つきを犯すと、すかさず植田が直後に読まれたその「あふ(こ)」を攻め取り、続く67枚目「やす」も左中段に攻め取って自分のペースを取り戻す。森本は残り13枚から札を減らすことができない展開となっている。もう一組の宮川 - 西岡では、宮川が67枚目「やす」を取り、68枚目「たご」を強引に押さえ、順調に勝利へと近づく。宮川は71枚目「も(ろ)」で敵陣左下段を厳しく抜いて、東大寺に1勝をもたらした。残る森本 - 植田であるが、植田は勝ちきれそうなものの、苦しそうな表情を浮かべながら取りを進めていく。森本は77枚目「た(ま)」78枚目「い(まは)」をかろうじて守るものの、反撃もここまで。植田が80枚目「わす(れ)」と81枚目「なつ」でこの日好調の左攻めを決め、畝傍の4勝目を勝ち取った。
 畝傍高校は順当に勝利したが、植田の取りに若干の不安が残った。一方、東大寺学園は森本がいい粘りを見せたものの、宮川が一矢報いるに留まった。

 

2回戦 東大寺学園 対 奈良高校

東大寺学園 VS 奈良高校
×坂根 史弥(D級) 8 野村 紫帆(D級)○
○森本 隆太郎(D級) 8 平松 美奈(D級)×
×中野 雅文(D級) -- 内田 桃子(D級)○
×岸田 盛吾(D級) 15 坂田 諒一(D級)○
○宮川 泰典(D級) -- 岡山 安奈(D級)×
読手  北野 律子(A級公認読手)

 

 東大寺と奈高の対戦。東大寺は敗退すると代表の可能性が消える一方、奈高側も敗退すると次の畝傍戦で勝利しても勝数によっては代表になれないパターンがあり、両校ともに勝点を譲れない対戦である。
 試合開始早々、東大寺・宮川が1枚目「きみがためを」2枚目「ながら」3枚目「おと」4枚目「あはじ」5枚目「ひさ」を5連取。7枚目「たご」を右下段に守り、8枚目「こい」も守って一気にリードを広げる。対戦相手の奈高・岡山の経験が浅いため、奈高にとってはやむを得ない展開だ。この間、奈高側も坂田が同じく「ながら」「おと」「ひさ」「たご」「こい」を連取。 13枚目「よも」の時点で岸田24 - 15坂田と9枚の差をつけると、14枚目「ふ」では岸田のお手を誘い一方的な展開に持ち込む。また、奈高・内田は12枚目「わすれ」の右下段攻め、13枚目「よも」の右下段攻めなど、気迫あふれる取りを展開する。
 20枚目「ちぎりき」が読まれた時点での状況は、宮川13 - 26岡山、 岸田25 - 14坂田となり、宮川と坂田がリード、また内田もリードを広げている。東大寺はポイントゲッターと思われる坂根・森本の奮起が不可欠であり、奈高側はその両者をどう押さえ込むかが勝敗のポイントである。森本は25枚目「あさぼらけあ」を左上段で守って森本16 - 19平松と若干のリード。 野村は28枚目「む」を左下段に攻め取る。野村は声もよく出ており、坂根が若干押され気味の展開となっている。野村は続く35枚目「あさぼ(らけう)」を左上段に攻め取り、36枚目「しら」でも遅れながらも右中段を攻め、坂根17 - 12 野村として試合の流れを引き寄せる。また宮川はこの「しら」を取った時点で宮川6 - 23 岡山とし、勝利をほぼ決定する。勢いづく野村は38枚目「この」40枚目「あけ」を続けざまに右中段に攻め取り、リードを広げていく。森本 - 平松は、平松が41枚目「わが(い)」などを守り抵抗するが、森本の勢いが上回り森本のリードが続く。
 49枚目「かぜを」で坂田は自陣右を払うお手つきを犯す。この時点で宮川と内田がそれぞれ残り2枚とする。53枚目「はるす」で宮川が勝利、54枚目「なが(か)」で内田が勝利し、両校ともまずは1勝を獲得する。56枚目「もろ」を森本と野村が取った時点の枚差は森本6 - 14平松、坂根14 - 6 野村、それぞれ8枚差で逆転するには少々苦しい展開である。こうなると、岸田 - 坂田戦に勝敗のウエイトがかかってくるが、坂田が出札を確実に取り進めリードを広げている。66枚目「い(に)」で坂田は勝利を決め奈高2勝。勝点まで残り1勝とした奈高は野村が着々と札を取り進め、68枚目「あまの」で左下段に戻り、71枚目「はる(の)」を右上段に攻め取り残り1枚とすると、74枚目「なに(はが)」で坂根がお手つきを犯し、野村の勝利で奈高の勝点が確定した。森本 - 平松は森本が8枚差で勝利したが、東大寺の代表枠の可能性はここで消滅した。

 

3回戦 畝傍高校 対 奈良高校

畝傍高校 VS 奈良高校
○奥田真由子(D級) 7 坂田 諒一(D級)×
○川内 皐子(B級) -- 岡田真理香(D級)×
×磯見 麻衣(D級) 4 平松 美奈(D級)○
○植田しおり(C級) 6 野村 紫帆(D級)×
×窪田 里奈(D級) 12 内田 桃子(D級)○
読手  小西 淑子(A級公認読手)

 

 畝傍・奈高が勝点を取る展開となり、この試合で勝利した方が奈良県の代表となる。畝傍のほうが若干戦力的には有利であるが、組み合わせによっては奈高にも十分勝てる可能性はある。組み合わせを開けてみると奈高は畝傍のエース川内を外すことに成功した。ここの当たりで勝つのは難しいが、他の4組のうち3組で勝利できる可能性は十分あり、川内を外したという意味で、組み合わせは奈高が有利なものとなった。
 1枚目「みかの」で内田はいきなりお手つきを犯すが、2枚目「ふ」を左下段に、3枚目「あさぼらけあ」を右上段に攻め取って、枚差をすぐにリカバーする。6枚目「む」を植田・窪田がそれぞれ右下段で守ると、川内も確実にリードを広げる。岡田は8枚目「たご」13枚目「なげき」でお手つきをしてしまうが、まだ経験の浅い岡田にとって川内にリードを広げられてしまうのは仕方のないところだ。
 この間、9枚目「かぜを」で植田はお手つきを犯し、若干緊張しているように見える。17枚目「ありま」の時点で川内がリード、野村と内田が優勢、奥田 - 坂田と磯見 - 平松は互角の展開で試合は進行する。劣勢の植田だが、21枚目「あり(あ)」をしっかりと敵陣右下段に攻め込み、22枚目「たか」でも左上段攻めを決め、動きが戻り始める。一方、窪田 - 内田は「たか」で内田が右中段を守ると23枚目「なげ(け)」も攻め取り、24枚目「おく」では左下段攻めを決める。25枚目「きみがためは」は窪田がきわどく左で守るが、気持ちでは内田が押し気味のように見える。磯見 - 平松は平松がリードしかけるかに見えたが26枚目「よも」でお手つきを犯し、競った状況が続く。26枚目「いまこ」で野村が鋭い右下段攻めを決めると27枚目「ひさ」では植田が激しい右攻めで返し、植田 - 野村、また磯見 - 平松も拮抗した試合が続く。 奥田 - 坂田は38枚目「し(の)」の時点で奥田が若干リード、窪田 - 内田は内田が優勢だ。
 ここまでを見ると、奈高にも十分勝機がある展開だ。川内は着々と札を減らし続けているが、他の4組は苦戦気味で奈高の気迫が畝傍を圧している印象を受ける。45枚目「あらし」で平松がお手つき、46枚目「ながか」では内田が遅いものの左中段の札を拾う。また植田の取りに落ち着きが戻っているように見える。50枚目「かく」で川内が勝ち、畝傍がまず1勝を挙げる。植田は 52枚目「みかき」の時点で植田9 - 14野村の枚差だが、54枚目「わす(れ)」55枚目「あはじ」56枚目「もろ」を連取し札を減らし始める。57枚目「はなさ」も攻め取るが、一方で窪田がダブルを犯してしまい、内田の優勢が広がる。また、ここまでで奥田 - 坂田は依然競った状況が続いている。内田は58枚目「あら(ざ)」も自陣に戻って取り窪田12 - 6 内田と倍セームまでリードを広げる。ここまでで状況は植田4 - 14 野村、奥田7 - 11坂田。畝傍は植田が試合を決めそうであるが、窪田・磯見は押され気味である。ここで畝傍の奥田が札を減らし始め、63枚目「た(れ)」をキープ、64枚目「ひ(とも)」で右を守り、決まった1字の守りで奥田4 - 10 坂田とする。66枚目「あふ(こ)」の時点で枚差は植田2 - 11野村、窪田11 - 2内田。67枚目「あけ」で窪田がお手つきし、68枚目「め」を内田が取って勝利し、奈高1勝。この「め」を植田も攻め取り植田1 - 11野村。また坂田はこの「め」を右下段で早く守り、まだあきらめていない様子が伝わってくる。畝傍の2勝目が決まるかと思われたが、70枚目「あま(の)」の空札で植田がお手つきをしてしまい、植田2 - 9 野村の状況に戻ってしまう。奥田 - 坂田の枚差も奥田2 - 9 坂田。71枚目「あきの」では坂田が攻め取りを決める一方、植田はダブルを犯し、連続お手つきで枚差を3 - 7まで戻してしまう。ここで奈高の平松が磯見に対して一歩抜け出し始め、75枚目「なつ」の時点で磯見5 - 3平松とする。奥田は76枚目「あは(れ)」を右下段で守り6枚差で勝利。代表まであと1勝とする。植田は連続お手つきで乱れをみせたものの、最後は78枚目「あき(か)」を右下段で守って5枚差で勝ち、畝傍の代表が決定した。磯見 - 平松 は80枚目「やま(ざ)」を平松が右下段を攻め取って勝ち、チームは敗れたものの畝傍から2勝目を手に入れた。終盤、畝傍は非常に危険な展開であり、相手が団体戦戦術を駆使したり、お手つきなどのミスがあと1つでも出ていれば負けていたかもしれない薄氷の勝利だった。


総評・あとがき

 今回の予選も去年に引き続き畝傍高校の勝利となった。だが、枚数差を見ていただければわかると思うが決して簡単に勝利できたわけではなく、敗退する可能性も孕んでいたと思う。奈高と東大寺に挽回の兆しがあるのはあきらかだ。高校選手権本戦では、団体戦では畝傍高校は初戦で徳島県の城東高校に4-1で勝利し、2戦目で福島県の安積黎明高校に敗退したが、全国大会の団体戦で1勝を手に入れることができた。個人戦では川内がB級4位、植田がC級4位、坂田がD級で4位にそれぞれ入賞した。川内は3年のため引退するが、3人とも昇級まであとわずかだ。
 このあとがきを書く一週間ほど前、近畿総合文化祭の奈良県代表選考会の運営に行ってきた。この選考会で競技している選手たちを見て、ふと自分が学生だったときの東京・江戸川スポーツセンターで行われている学生選手権を思い出した。というのも選考会で3試合目・4試合目と見ていると、どんどん選手たちの札を取るスピードが速くなっていく。選考会の出場選手はみなC級以下のはずだが、とてもそのレベルの速さとは思えない。D級はC級レベル、C級はB級レベル、と言われることもある学生選手権の試合が頭の中でオーバーラップした。今年度の予選と全総文選考会に出場した選手の中でこの選考会にも参加した選手に関しては、ほぼ全員が速く、強くなっているように感じ、わずか4ヶ月足らずでここまでの伸びを見せられ、驚嘆の思いがあった。奈良県のかるたとしても本当に喜ばしいことである。この3校含め、現在熱心にかるたを練習している高校生が、それぞれいい意味でのライバル心を持ち競い合っていけば 実力はどんどん上がっていくだろう。競技かるたは、学生の間は特にライバル意識を持って競い合うことが大事だと考える。勝負ごとなので、敗れて悔しい思いをすることもあると思うが、それを互いに励まし合い、色々な事を乗り越えながらそれぞれの思うところを目指していくのが高校生のかるたのいいところだと思う。奈良県かるた協会としても、あらゆる意味で良い練習環境を提供したいと考えている。ぜひともお互いに競い合って努力と友情と、そして勝利を育んでいってもらいたい。

(2010/09/06)

文責   村上 元史

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