奈良県かるた協会

Nara Pref. Karuta Union Official Website

全国奈良大会結果

トップページ > 高校選手権予選 > 平成13年度高校選手権奈良県予選戦評

平成13年度高校選手権奈良県予選戦評

--- 第10回奈良県高等学校小倉百人一首選手権大会 ---

 今回の予選は、奈良高校、東大寺学園高校の2校の参加で行なわれた。参加校が2校なのはやや寂しいが、実質的にこの2校の決戦となることは明白であるし、どちらが全国大会に出ても実力的に恥ずかしくない強さを持っているので、高校選手権の予選としてのレベルは十二分に満たしていると言える。以下では、試合内容を吟味しながら予選の詳細を報告する。

東大寺V奪還 奈高惜敗

奈良高校 VS 東大寺学園高校
×徳田 理也子(C級) 5 村井 一裕(B級)○
○上出 絵美(A級) -- 松尾 光真(C級)×
×西本 麻衣子(D級) -- 浅田 侑祐(B級)○
×高辻 真由子(C級) 8 武部 軌良(B級)○
×浦岡 憲司(C級) -- 斎藤  季 (C級)○

 さて組み合わせであるが、今回は組み合わせが非常に重要となった。奈高の上出は出場選手の中では唯一のA級選手で、普段の練習でも、奈良県協の他の大学生のA級選手などとも互角以上の戦いをしており、試合前からほぼ確実な1本であると予想されていたからである。今回は層の厚さとしては東大寺に分があるだけに、組み合わせを前に奈高側は上出を相手のB級選手と当てることに、東大寺側は上出を外すことに、かなりの配慮をしたと思われる。そして、蓋を開けてみれば組み合わせは上記のようになった。上出を外した東大寺は他の4組でも互角以上の展開が期待できるので、組み合わせを見た限りでは東大寺有利だと言えるだろう。対する奈高側は浦岡-斎藤以外は上の級の選手と当たっているため、どこかで下克上が起きなければ勝てないというやや不利な状況である。団体戦ならではの下克上が起きるのか、起きないのか、に注目が集まる中、試合が始まった。
 1枚目はいきなり1字決まりの「せをはやみ」が読まれる。1枚目で1字決まり、気持ちよく抜いて乗って行きたい札であるが、奈高浦岡は自陣の「さ」を払ってしまい、いきなりセミダブルをしてしまう。つづく4枚目「おおけ」で奈高徳田、西本がお手付き。8枚目「こぬ」で西本がお手、15枚目「よも」で上出がお手など、序盤20枚目までは奈高のお手つきが目立つ。ただ、出札は取っており東大寺にペースを渡してはいないという状況。この均衡の中、A級上出はやや有利に試合を進める。試合が動き始めたのは25枚目「あい」。ここで奈高浦岡、西本がともにセミダブル。東大寺斎藤、浅田がリードし始める。続く30枚目「ゆう」では浦岡が相手陣「ゆら」に触ってダブルを犯す一方、浅田は敵陣「ゆら」から華麗に戻り手を決め、東大寺斎藤、浅田がそれぞれリードを広げる。一方の徳田-村井、高辻-武部はそれぞれが競った試合になっており、徳田、高辻がよく頑張っていると言えるだろう。このまま上出、浅田、斎藤がリードを広げそうな気配であったが、38枚目「たき」で浅田がお手つき。続く出札「あけ」はしっかり取り傷口は広げないが、次の「ひとも」は西本が取り大量リードは許さない。浅田-西本は浅田がリードするが西本がついていくというペースで試合が進む。41枚目「はるの」から46枚目「ありあ」まで空札が続き、50枚目「め」が読まれた時点で上出(奈高)、斎藤(東大寺)が大きくリード、浅田(東大寺)がややリード、徳田-村井、高辻-武部が競っているという状況で後半を迎える。リードしつつある浅田であるが、52枚目「あはじ」でお手を犯す。しかし続く出札「きみを」「なにし」「ふ」を3連取し、力ずくで札を減らしていく。また斎藤も61枚目「やす」、62枚目「はなの」を連取し、着実に勝利へ近づいていく。さらに、ここまで競っていた高辻-武部も、武部が抜け出し始める。そして71枚目「あらざ」で浦岡がセミダブルし、東大寺斎藤がまず1勝を決める。この時点で、徳田-村井が互角の展開、西本-浅田、高辻-武部がそれぞれ12-6程度の倍セームであり、上出が勝ちそうなものの、試合は東大寺有利に傾いてきた。75枚目「よを」で粘る松尾を振り切り上出が勝利を収め、勝敗は残す3組に委ねられることになる。浅田、武部で決めたい東大寺であるが、76枚目「あらし」で武部がセミダブルをし、奈高につけこむ隙を与えてしまう。試合は混沌の様を呈してきたが、この中で浅田は着実に札を減らし、82枚目「もも」を取り、東大寺2勝を決める。ここで残る2組は高辻-武部が8-4、徳田-村井は6-6程度で、奈高側は勝つためには高辻が追いつくことが絶対の必要条件になる。しかし、この重要な局面で東大寺主将である武部が、続く出札「か(さ)」「あさ(ぼあ)」「(不明)」「む」を一気に4連取し、主将の使命を果たす3勝目で東大寺の勝利を決めた。ここまでB級村井相手に互角の試合を演じてきた徳田はここで力尽き、最後は村井が連取して勝利を収め、今年度の予選は東大寺優勝で幕を閉じた。

一戦一戦の感想と選手について

 村井-徳田戦。村井は中学時代にかるたを始め、高校進学後、去年の予選にも出場、冬にはB級で3位入賞しており、まぎれもなく東大寺のポイントゲッターである。その村井相手に、チームの勝敗が決定するまで互角の試合を展開した徳田は、よく頑張ったといえる。徳田は高辻とともにこの数ヶ月、白毫寺や中央公民館の練習にも積極的に参加しており、最近めきめきと上達してきた中の一人で、A級選手に2枚差まで詰め寄るなど練習の内容も充実していた。今回チームは敗れてしまったが、その頑張りは決して無駄ではないので、これからも今までのような姿勢で練習に励んで欲しい。全総文や個人戦などまだまだ活躍の場はある。村井に関しては、今回は危なげない試合運びといったところか。競った試合になったが、村井にまずかった点は特に見当たらなかった。団体戦が恐ろしいのは下の選手が上の選手を破るところにあるのだが、それを許さなかったところがやはり良かったと思う。この調子で全国大会でも頑張って欲しい。

 松尾-上出戦。上出は今回出場したなかで唯一のA級選手である。去年の全国大会に出場し、優勝校の静岡雙葉学園から1勝をもぎ取った選手でもある。その上出が相手であればやはり松尾は分が悪く、敗れてしまったのは致し方ないところである。ただ、松尾の良かったところは斎藤が勝つまで負けなかったところである。試合中も気迫に満ちていて、それが粘りに結びついたのだろう。実力差があっても立ち向かう勇気があることは、団体戦ではチームにも影響を及ぼすため、非常に重要なことである。上出はチームは敗れてしまい、残念な結果であったが、伊吹先生が転任になったあと、よく奈高かるた部を切り盛りし、自分の練習も後輩の育成もよく頑張ったと思う。高校生A級としては十分な実力をつけているので、高校選手権A級個人戦も全総文も自分の実力が出しきれるよう頑張って欲しい。

 浅田-西本戦。ここの組み合わせは東大寺側としては確実に勝っておきたい試合だが、それに応え浅田が着実に勝利した。浅田も村井と同様、中学からかるたを始めており、この経験差を埋めるには西本にとっては少し荷が重かったのかもしれない。西本にも気迫はあったのだが、浅田も気迫負けしておらず、その結果として順当に浅田が勝ったといえるだろう。浅田はB級昇格を優勝で果たしたこともあり、これからも活躍が期待できる。また西本も試合内容から見て、5将としての働きは十二分に果たしており、今後に期待できる。両者ともこれからも練習に励み実力をつけていってもらいたい。

 武部-高辻戦。試合は中盤まで競っていたが、終盤抜け出した武部がそのまま決め、チームの勝利も決めた。実力、経験とも上の相手に高辻はよくついていっていたのだが、接戦になりながらも武部は落ち着いてかるたを取っており、お手つきも少なく、焦らずかるたを取っていた。今回の東大寺は特に誰かが抜きん出ていたわけではないが、その中でチームをまとめる役割は武部が果たしており、最後も武部が決め、主将としての存在感は十分にあった。一方の高辻はこの数ヶ月間、徳田とともによく練習にも通い頑張っていたが、最後はやはり実力と経験の差が出てしまった。ただ、繰り返しになるがその頑張りは決して無駄ではなく、今回の試合も確実に自分の経験となり、それが実力となっているはずである。今までのような姿勢で練習を重ねれば、今回の経験を活かせる場が必ずやってくるはずである。

 斎藤-浦岡戦。この試合は両者がC級で唯一同級の対戦であるため、勝敗の肝の一つであったが、予想に反して大差になってしまった。奈高側は浦岡で1つ勝ちを取りたかっただけに痛く、それだけに東大寺側はここでの大差の勝利は他の4組にプラスの影響を与える結果となった。確かに組み合わせを見た限りでは、斎藤は東大寺の成長株の一人で、先の春会の有段者の部でも優勝していることもあり、斎藤やや有利と予想できたが、大差になってしまったというのは両者の精神的な差が出てしまったと言えるだろう。斎藤はいつもの自分のかるたを取ることができたが、浦岡はいつものかるたができていなかった。その差がやはり大差を生んでしまったと思う。団体戦で適度な緊張感と勝利への気持ちを維持するのはA級選手でも難しいことで、今回の結果は団体戦でしばしば見受けられる「団体戦であるがゆえの大差勝ち(負け)」というケースに当たるだろう。

最後に

 今回は東大寺学園が一昨年、昨年の雪辱を晴らし優勝杯を奪還した。チーム全体としての実力も、やはり今回に関しては東大寺に分があったと思う。奈高側は全体としてはチームワークも良く、うまくまとまっていたのだが、やはり個人の力の差が勝敗を分けてしまった。東大寺は2年生が多く、奈高は3年の上出が抜けるため、奈高が来年東大寺と対等に渡りあうためには、今の2年生、1年生が強くなるしかない。そのためにはチームを引っ張る人材が必要で、今後そういった選手達の台頭が望まれる。東大寺もそれを阻むためにはより一層の個人のレベルアップが必要なのだが、それはさておき、まずは本大会である全国大会で良い結果が出せるよう練習に励んでいって欲しい。また、結果も重要であるがそれだけではなく、挑戦したものだけが得られる経験を積むことも大事である、という気持ちも忘れずに本戦に臨んで欲しい。また団体戦戦術についてであるが、両校とも毎年確実にレベルアップしている。声のかけ合いも自然なものが多く、両校ともうまく気持ちがチームに伝わっていた。東大寺と奈高で争うようになってからもうかなり経つため、経験が蓄積してきたものだろうと思う。こうして培ってきた感覚を大事にして、これからも伝えていって欲しい。
 この2校がお互いにとって良いライバルであり続け、より高いレベルに到達するためにお互いに切磋琢磨し合っていくことを今後とも期待したい。

文責   村上 元史

このページの一番上へ戻る

Valid HTML 4.01 Transitional Valid CSS!

トップページ

予定表・当番表

全国奈良大会結果

高校選手権予選

リンク集

(c) Nara Pref. Karuta Union