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平成14年度高校選手権奈良県予選戦評

--- 第11回奈良県高等学校小倉百人一首選手権大会 ---

 今年度の予選は、前年度と同じく、東大寺学園高校、奈良高校の2校で覇が競われた。今回は5年ぶりにA級選手のいない予選である。しかし出場選手全員がC級以上であり、そういう意味では、ある一定のレベルは保たれているといえよう。以下では、予選の結果を参照しながら、この一戦について論じていく。

東大寺二連覇 奈高再び惜敗

東大寺学園高校 VS 奈良高校
○浅田 侑祐(B級) -- 塚本 智子  (C級)×
○斎藤  季(B級) 4 高辻 真由子(C級)×
○村井 一裕(B級) 4 西本 麻衣子(C級)×
○瀬尾 瑞人(B級) 4 城内 里実  (C級)×
×松尾 光真(C級) 6 徳田 理也子(B級)○

 今回の出場選手は、前年度にも出場した選手が多い。前年度からの出場選手がどのように成長したか、また新しく出場した選手はどれだけの実力を持っているのか、というところが注目すべき点である。東大寺側はB級選手を同中学から即戦力補強しており、その点では中高一貫校として有利である。今回は東大寺がB級4名とC級1名、奈高がB級1名とC級4名である。C級選手がB級の選手を倒す可能性は十分にあるが、それでもB級選手のほうが実力的には一枚上手である。それらを勘案すると、組み合わせ以前の段階で「6:4程度で東大寺が優勢」といえるだろう。組み合わせに関しては、奈高側は勝つためには主将のB級徳田で相手のB級と当たりたいところである。迎え撃つ東大寺側は、どう当たるかというよりも、練習の力を発揮して自分達のかるたができるかどうか、ということが肝要になる。もし相手のB級を外せばプラスアルファで有利になるだろう。
 肝心の組み合わせは上記のようになった。奈高は徳田が外され、東大寺は他の4組で互角以上の展開を期待できる当たり方である。勝敗は別にして、思惑としては奈高は外されてしまい、組み合わせも東大寺が有利となった。

 今回は結果から入る。というのも、試合は全員がB、C級という影響もあるのだろうか、5組とも終盤までほとんど互角の展開で進み、試合を形容し難いからである。東大寺が1勝目をあげるのが70枚目の浅田、奈高が1勝目をあげるのが81枚目の徳田、85枚目で村井が東大寺2勝目をあげ、87枚目ですべての試合の決着がつくという大接戦であった。すべての試合があまりに一進一退であったため、細かく論じることは難しいと判断し、今回は個々の試合の感想も含め、全体として論評する。結果は上記の通り、東大寺が4-1での勝利であった。

 まず村井-西本戦。村井は東大寺の主将であるので、この組み合わせでは勝利が期待される試合であるし、もし劣勢になればチーム全体の士気にも影響するので重要な一局である。対する奈高西本であるが、西本はスピードという長所を持つ反面、お手つきという弱点を持つ。気持ちは常に出ているが、それが結果に表れるときと、そうでないときがある選手である。かるたが決まれば格上を倒す選手だけに、村井は要注意である。この日、私の見る限りでは西本の調子は良かった。試合では村井が序盤からリードし西本がついていくという展開になる。終盤村井はリードを広げそのまま勝つかと思われたが、西本が自陣を必死に守って2-4まで持ってくる。しかし最後は村井が決めた。村井は三段で、A級まであと一息の選手である。この冬のシーズンで、以前の弱点だった「力のムラ」はかなり解消されたと思う。前半からリードし、他の選手に対しての精神的支柱になれたのが良かったと思う。潜在能力の高い西本を、主将の村井が確実に仕留めた、という一戦であった。

 次に松尾-徳田戦。徳田は奈高の主将であり、この組み合わせでは勝利が期待される。できれば差をつけて勝ち、早めに決めたいところである。対する松尾は、逆に大差負けしてはならない試合である。いかに差をつけられないかがポイントである。だが、もし松尾が勝てば東大寺が圧倒的に有利になる。試合は、徳田が札は取るのだが札が減らない、という展開になる。つまり札を取って差を広げようとするのだが、流れに乗っていきたいところでお手が出て、結局競った展開になってしまう(前半お手つき4回、後半0回である)。徳田はこの試合では、早く勝つ、という気負いからお手つきが出たものだと思う。44枚目「おおけ」で松尾がダブルを犯し、最終的にはそれが効いて、試合は決まった。松尾はいつも通りのかるたを取っており、最終的に6枚負け、浅田が大差で勝った後の敗退なので、勝つことはできなかったが及第点はつけられるだろう。徳田はこの試合はできれば差をつけて勝ちたいところであった。劣勢の奈高がこの組み合わせで東大寺に勝つためには、主将の徳田が早く決めて、周りに「あと2勝」という意識を早めに与えることが必要だっただけに、惜しまれるところである。

 浅田-塚本戦。ここの組み合わせは経験、実力ともに勝る浅田が着実に勝利した。塚本もこの1年よく頑張り、初段を取るまでになったのだが、浅田との差を埋めるには至らなかった。浅田は去年に引き続いて勝利を期待されているところで確実に勝利し、ポイントゲッターの役目は果たしたといえる。

 そして斎藤-高辻戦と瀬尾-城内戦である。この2組は最初から最後まで一進一退の攻防だった。浅田が東大寺1勝を挙げ、81枚目「あまの」で徳田が奈高1勝を挙げた時点で、残り札は6枚。斎藤-高辻が3-3で、瀬尾-城内が2-4である。なお、村井-西本も、西本が守って差をつめ2-4である。この試合のポイントはここであった。この状況では、僅差ではあるが東大寺が若干有利である。それは東大寺側の選手がB級選手であるがゆえの「一枚上手」がそのまま枚差に出ているものといえなくもない。逆に奈高の付け入る隙は唯一ここにのみあった。それは徳田が1勝目を挙げそうな時点から、組札を利用した「札合わせ」の団体戦戦術を用いるべき絶好の局面であったからだ。実力的に一枚上手の東大寺を「団体戦で」倒すには、ここで「札合わせ」を用いるべきだったのではないだろうか。奈高側は勝つには残りの3人で2勝するしかなく、この局面の3組(4-2、4-2、3-3で劣勢)が2勝するためには「札合わせ」を利用した戦術が最も効果的であったと思う。それは東大寺側にもいえることで、枚数的に若干有利の東大寺側は、奈高に札合わせをさせないような札の配置にもっていかなければならない。そうすればそのまま押し切れる枚数と実力差である。結果的には奈高側は札合わせの戦術を用いず(少なくとも私にはそう見えた)、そのまま東大寺側が押し切る形となった。今回、東大寺有利ながらも実力的にはそんなに変わらなかっただけに、後半の競った展開では組札であることを考慮し、両校とももう少し札合わせに気を配ってもよかったのではないかと思う。

最後に

 今回は東大寺学園が前年に引き続き予選を制した。東大寺のほうが強かった、といえなくもないのだが、今回の両校の実力差は、B級選手、C級選手の数は違うものの、個々の力の差もチーム全体としての力の差もわずかなものだったと思う。だが、そのわずかな差でそのまま決まってしまった試合だった、という印象を受けた。両校に意識して欲しいのは、これは団体戦だということである。団体戦では必ずしも実力の強いチームが勝つのではなく、個々の実力では劣るがチームとしての戦術に優れたチームが格上を倒すということは頻繁に起こる。そこが競技かるたの団体戦の恐ろしいところである。そして団体戦の戦術とは、チームワーク(声かけ)と「札合わせ」である。両校ともチームワークはよいだけに、それを踏まえた上でもう一歩上のスキルである、「札合わせ」を学習していかなければならない。勝利した東大寺側は、全国大会でそういった団体戦戦術を強豪チームから盗んで、後輩たちに伝えていって欲しいところである。また、全総文のメンバーになった選手は(控え選手も含めて)、他のチーム、特に静岡や東京、島根などのチームの団体戦を見て、もしくは実際に戦って、その技術を学んで欲しい。
 今回、敗れはしたが奈高のチームワークは格段に良かった。これは賞賛に値すべきものだろう。東大寺は2年連続の全国大会出場。前年の経験も活かし、前年以上の成績を収めれるよう頑張って欲しい。

('02/05/26)

文責   村上 元史

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